2つの自然栽培のお米がある。どちらがより自然栽培と思いますか。「自然」に求めるポイント。
2つの自然栽培がある。どちらがより自然栽培と思いますか。「自然」に求めるポイント。
このことに関しては、各人各様のご意見があると思いますが、自然栽培のお米も育てている、私個人の意見と思って一緒に考えて頂けたら幸いです。
自然栽培をしていない人が、こんな記事を書いていると叱られるかもしれませんが、実際に自然栽培でお米を作っていますので、そこは、作り手にしかわからない、そんな角度からの指摘・観察だと思って、そんな考え方、とらえ方もあるんだと、読んでもらいたいです。
【目次】
1.いま周知されている「自然栽培」のイメージ
2.果樹と稲作(水稲)の違いによる「自然栽培」の違い
3.果樹と水田での土壌菌たち(微生物)の働きの違い
4.「無農薬」栽培へのこだわりと普段の食生活のギャップ
5.農業の環境って、数歩歩いただけでも全然違うものなんですよ!
6.「自然栽培」って本当に「無施肥」なの?
7.「肥料はやらない」けど「栄養分は用意」する。え?それって?
8.「放置栽培」と「自然栽培」は違う。
9.「自然栽培」と「譲る米」。どちらが、より「自然」のイメージに近いですか。
自然栽培に2つあり!
これはどんな事か。
それには、「自然栽培」という言葉がどのように知られるようになったのか、確認する必要があります。
1.いま周知されている「自然栽培」のイメージ
「自然栽培」という言葉は、「奇跡のリンゴ」という映画や著作で一気に周知されました。
それ以前からも使われていた方があるかもしれませんが、今幅広く知られている「自然栽培」という言葉の意味は、そこから来ているように思われます。
「自然栽培」の定義は、「無肥料」「無農薬」にあると思います。
私は、木村さん「自然栽培」の全ての農法を理解しいるわけではありませんので、私の今の理解と解釈を元に進めていきます。
知られない方も多いかもしれませんが、木村さんは、リンゴだけではなく、お米作りについても、実際に育てられ、自然栽培の理論を持たれています。
2.果樹と稲作(水稲)の違いによる「自然栽培」の違い
リンゴの場合は、土を硬くしないために、根の上(土の上)を、あまり歩かないようにされていますが、お米の場合は、そうはいきません。
お米の場合、除草のために、何度も田んぼに入り、どんなに気をつけていても、根を切り、傷つけます。
また、雑草についてですが、リンゴの場合は、高さをそろえるように草刈りしますが、わざと残します。
お米の場合は草を抜き取らないと、栄養を雑草に盗られて、稲が育ちません。
リンゴの場合は、受粉のための虫ちゃんが大切ですが、米にとって虫は必要ありません。
昆虫に花粉を運んでもらうものとは異なり、雄しべの花粉が「風」で運ばれて受粉が行われます。
その上、雄しべの花粉が、同じ花の雌しべに付いて受粉する「自家受粉」です。
お米作りにおいて、お米の生育には虫ちゃんは、申し訳ないですけど必要ありません。
虫ちゃんがいた分だけ、黒い斑点などがある、黒いお米が出来たり、稲の生長を妨げたり、枯らしたりしますし、そのリスクが増えます。
自然栽培は、リンゴの場合、不耕起、つまり、耕しませんが、お米の場合は秋に耕すことはしませんが、春に耕します。
稲作の場合、稲刈りの時にコンバインで田んぼの中を移動します。
コンバインの重さは、5,000㎏です。つまり5トン。籾を1,000㎏収穫したとすると6トンにもなります。
その重みをクローラー(キャタピラー)でねり歩くのです。
土が圧縮に圧縮されます。
果樹園には、そんな重い機械は入りません。
耕さずに年をまたぐと、無酸素の土の状態で、長い間立つことになります。
そうなると、土の中で土壌菌などの微生物は満足に働けません。
しかも秋に起こしていないから、藁や稲株もすき込まれませんから、土壌菌たちのエサである有機物も土の中にはありません。
雑草や、藁や、稲株の有機物が腐らないという事は、田植後、水田の土の中で腐敗が始まり、腐敗ガス(メタンガス)が根を痛める可能性が増えます。
ただでさえ栄養が少なく、それなのに雑草に栄養を奪われ、トドメとして腐敗ガスで根を傷つけられる。
稲の気持ちになると
「こんな状態で、おれに、一体どうやって育てっていうの?」
「健全に育てっていうの無理やよ」
と思っているに違いありません。
私は、自然栽培が、秋起こししないことが、「なぜだろう?」と不思議でなりません。
秋に藁をすき込んだ方がいいのに、、、どうしてだろうと、思っています。
極端に、柔らかい、粘土質の土壌、もしくは、水を張った状態の田んぼならわかります。
秋起こししない方がいいです。
藁を風化させるメリットが分からないのです。
水田にした時のメタンガスの発生を気にしているのなら、秋に藁をすき込んだ方がメタンガスの発生時期もまだいい方だし、量も春にすき込んだ場合に比べて、80%以上少なくなります。
勝手に言っていることではなく、参考にした科学的なデータがあります。
福島県農業試験場・農芸化学部・土壌管理研究室のデータです。
結局は、有機物。たかが半年、風化しようがしまいが、有機物です。微生物たちの分解対象です。
結局春にすき込んでも、メタンガスが発生しますし、量も多いですし、時期も7月と、稲の生長にとって勢いづいてもらわないといけない時期です。
これは一農家の疑問です。ややこしくしてしまって、すみません。
3.果樹と水田での土壌菌たち(微生物)の働きの違い
水田の稲においては、秋にしっかりと土と有機物を混ぜておくというのが、土壌菌にとっても土にとってもものすごく大切な事になります。
また、適切な言葉遣いかわかりませんが、リンゴは、乾いた水はけのよい土で育ちますが、お米は水を張った水田で育てます。
水田中は、土の中が無酸素状態になりやすく、よい働きをする土壌菌などの微生物は死ぬか、休眠状態に入りやすい、いわゆる、微生物が働きにくい環境となります。
あくまで良い働きをする好気性の土壌菌です。
全てではありませんが、嫌気性の微生物は、あまりいい働きをしてくれません。
想像してください。水の流れのとどまった、ドブの状態を。その匂いを。
臭くて汚くなります。腐敗のみです。
乳酸菌などの良い微生物が、良い発酵をしてくれたヨーグルトは喜んで食べることができますが、
臭く汚く、ねっとりと腐敗させられたドブダメの水と土で育った農産物を、健康のためとは言っても食べたいとは思いません。
どちらも○○菌という微生物が働いていますが、その生み出されたものには、この様に、私たちにとって、良し悪しが出てきてしまいます。
ブルーチーズは食べられても、カビの生えた餅は食べられません。食べちゃダメですよ!
納豆は食べられても、糸の引いた焼き芋は食べれますか。食べちゃダメですよ。
松茸やシイタケは食べれても、毒キノコは食べれません。ホント食べちゃダメですよ!!
キノコも菌ですが、生み出すものに毒性の有る無しが分かれます。
そのように乾田か水田かによって、土を作ってくれる土壌菌の様態が変わってきます。
そのように果樹や稲作の違いを大雑把でもお伝えした上で、次の話に進んでいきます。
ここまでで、リンゴの場合と、お米の場合とでは、土はもちろん、受粉の仕方、実のつけ方などのは、全然違うんだなぁ、とわかって頂けたかと思います。
4.「無農薬」栽培へのこだわりと普段の食生活のギャップ
まずは「無農薬」。
これは農薬を使わないという事で、除草剤はもちろん、病気・虫対策の消毒の農薬も、生長に関係するホルモン剤の農薬も使わないという事です。
ちなみに、種なしブドウというものがありますが、あれは植物ホルモンの一種である「ジベレリン」を使って種ができないようにします。
種なしにするためだけでなく、その果実を大きくするためにも、「ジベレリン」を生育時期に合わせて使用します。
「ジベレリン」は、植物成長調整剤にあたる農薬で、ブドウだけでなく「植物の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤」で、つまり生育をコントロールする、生育に影響を与える農薬です。
最近のブドウは、実も大きく、種もなく、甘くて美味しいのですが、安定した収穫のためにも、農薬の力を借りています。
私も子供が生まれた記念に、家庭菜園に、シャインマスカットを植えましたが、農薬を使う気がないので、おそらく種ありシャインマスカットになります。
シャインマスカットです。「社員いますか」と、確認しているのではありません。
・・・・・・打ち間違えて、そう変換しそうになりました、、、。
「無農薬」については、農薬を一切使わないという事で、それ以外の解釈の使用がないので、これで終わります。
でも、正直思うのは、除草剤を水田内で使わない、水田内に除草剤の水滴が入らない範囲でなら、畦畔や接する農道の除草作業を除草剤でしてはダメなのかなと、思ってしまいます。
そうすれば、だいぶ農作業の負担やコストが減ると思うのですけども、これは私だけでしょうか?
畦畔の除草剤使用と、お米の品質は、どれほど関係があるのかな、と、ふと思う時があります。
草刈りでするという事は、その分燃料を使いますから、CO2もまき散らしますし、人件費も除草剤散布に比べて、多くかかってしまいます。
本当に環境に優しいエコなのかな、と。
また、自然に優しいのかな、と感じてしまうことがあります。
畦畔の除草剤がお米に与える影響を心配するならば、アイスやスイーツに含まれる防腐剤などの添加物や人工甘味料、野菜や果物に使われている農薬を心配する方が、はるかに有意義な気がします。
そうそう、ここで誤解のない様にお伝えしますが、私の知る限りにおいてですが、木村さんは「こうでなきゃ自然栽培でない」「このやり方だけが自然栽培」というようなことは言われていません。
一応、「こういうやり方で、自然栽培として私はやっています」のスタンスで紹介していますし、「その土地、その地域であったやり方でやってください」というような感じです。
一つの「自然栽培の基準」を作られたことは、もの凄いことだと、私は思っています。
一つの定規ができたわけですから、それを基準にこれから枝分かれ、派生していくことができます。
一定の基準もなく、みんながあれこれやって、こんがらがって収集がつかなくなって困るのは、消費者の方々、お米を食べてくださる方々です。
食べてくださる方が、分かりやすいのが一番だと思っています。
それこそが、安心満足への第一歩だと思っています。
5.農業の環境って、数歩歩いただけでも全然違うものなんですよ!
農業をあまり知られない方は、水質も、土の性質も、気候も、日照時間も、どこでも同じだろう、と思われている方もあるかもしれませんが、実は全く違います。
場所によって、同じ地域でも、隣同士の田んぼでも、一枚の田んぼ内でも変わります。
(1)水 :ミネラル(硬度)、水温も違う。
(2)土 :土質、水はけ、土壌菌の種類や量、同じ一枚の田んぼでも違う場合がある
(3)気候 :海側、山側はもちろん、風当り、建物などの影などによっても、気温は変わる。
(4)日照時間:ナイターや外灯、建物などの影などによっても、日照時間は変わる。
同じ苗を植えても、縁が変われば、結果は変わります。
長年、試行錯誤で工夫研究されてこられた木村さんが、「この栽培方法でなければなりません!」なんて凝り固まるなんて、逆に考えられません。
その芯がありながらも、柔軟に対応できる、それが私が思う木村さんの凄い所です。
私なんかが人を評価するなんておこがましくて失礼ですが、多くの人が魅かれるのは、懇切丁寧な対応と、そういった人柄にあるのだと思います。
だから私がここで書いている記事は、木村さんの「自然栽培」を否定するものではありませんので、誤解のない様にお願い致します。
私は、自然栽培のお米、農薬を使わないで育てるお米、特別栽培米、特別栽培米の基準の更にその半分の農薬での栽培、など実際にしている米農家です。
その視点から、日ごろ思っていることを書いているだけです。
何もやっていない人が言うなら、問題なのかもしれませんが、汗水たらしてヒイヒイ言いながらやっている者の想いです。
へぇ~、現場の声なんですね、と、ご理解いただけると嬉しいです♪
6.「自然栽培」って本当に「無施肥」なの?
基本的には、有機肥料であれ、化学肥料であれ、やらない、という意味での「無施肥」。
ただこれは、有機肥料を否定しているのではなく、不完全な熟し方の有機肥料の場合のリスクに対し、警鐘をならし敬遠主義をとっているようです。
それで、自己に厳しく、有機肥料さえ使わずに育てることを「自然栽培」としています。
「じゃあ、何で育てるの?」
これってかなり気になりません?
私たちは、栄養分で植物が育つ、と授業で習っています。
なので、肥料を買いに行きます。
そこには、窒素・リン酸・カリウムが、必ず大きく記載されています。
「ば、バカね!!今更何言ってんの当たり前でしょ!!」
と思った方は、いい覚え方をされています。
◆窒素は、「葉」や茎に関係する栄養。
◆リン酸は、「果実」に関係する栄養。
◆カリウムは、「根」に関係する栄養。
つまりは、通称「葉・果・根(バカね)」という事です。
覚えやすいでしょ!
という事を思い出してみても、そうだったら、肥料をやらない自然栽培で育った農作物は一体どうやって、何を栄養として育つのか。
気になりませんか?
自然栽培のポイントです。
自然栽培でまず、植物ではなく、土を育てます。
土を育てるために、人の力を使います。
土を育つお手伝いをさせて頂くのが人です。
土が育てば、土が植物や農作物を育ててくれる。
農作物を育てるのは人ではなく、土である、と。
人は、土が育つための環境を整える、ことに注力する。
では「土を育てる」とは?
俄然気になります。
それは、ズバリ!土の中の微生物である「土壌菌」たちを育てるという事。
今でこそ人体でも
「腸内環境を整えるとは、腸内細菌のバランスを整える事」と誰でも知る所となりました。
土も同じで、
「土を育てるという事は、土壌菌たちのバランスを整える事」
これが大切な事です。
私が思うに、木村さんの凄い所は、その一点に集中して、それもピンポイントで、ストイックに研究と工夫をなされ、長期間、耐え忍ばれたことです。
この始まりのポイント、基本構想の要は、譲る米も全く同じです。
私は、「譲る米農法」を考え、実際にやっていたから、木村さんの自然栽培のこの考え方は、私なんかがいうと僭越至極ですが、本当にそうだと共感するところです。
譲る米農法も、「土壌菌たちのバランスとその活性化」が肝の中の肝で、そのために、その環境を作り出すために人が注力する、そこにポイントがあります。
お米を育てるのは、稲の仕事。
稲を育てるのは、土壌菌たちの仕事。
土壌菌たちのバランスと量を整え、土壌菌たちが活発に働き続ける環境を整えてあげるのが、人の仕事。
だから、「譲る」なのです。
今まで、農作物を育てる主体は人でした。
その主体性を「土壌菌」に譲る。
人が育てたお米ではなく、土壌菌が育てたお米だから。
「俺が育ててやったお米だぞ!」の傲慢さをかなぐり捨てて、その本当の功労者を中心に栽培方法を確立する。
だから、「譲る米」農法なのです。
ちょっと思いが入っちゃって少し話はそれましたが、譲る米農法については、またの機会に。
7.「肥料はやらない」けど「栄養分は用意」する。え?それって?
「肥料はやらない」けど「栄養分は用意」する。
この意味わかりますか。
「お店で売っているような肥料はやらない」けど「栄養が残るように」する、という事です。
ごめんなさい!
この次の発言は許してください。失礼な事とは承知しているのですが、実地に現場でやっている者の意見です。
「結局、有機肥料をやっていることと同じなのだから、きれいごとを言わずに、最初から肥料をやればいい!」
もちろん、有機肥料といっても色々なものがあり、粗悪なものもあります。
粗悪なものは、農作物に悪影響を与え、食べた人体にも悪影響を与えるそうです。
植物は、有機物をそのまま吸収することはなく、土壌菌によって無機物に分解されたものを栄養として取り込む。
その有機物を市販されている肥料以外に、取り込む方法がある。
①圃場(たんぼ)の中へすき込む作業
(1)稲刈り後のワラ
自然栽培では、10月や11月にすき込ませず、他も耕さず、放置するが、結局4月ごろにはすき込む。
毎年稲を育てていれば、そうならざるをえない。
市販の肥料はやらないが、藁もしっかりとした肥料分となる。
藁をどける作業なんてしてたら、どえらいことになります。
(2)雑草
田んぼの中には草が生えます。乾田、水田時共々です。
すぐにすき込むか、乾かしてから、かは別として、すき込んで使います。
藁の時と同様、雑草をどける作業なんてしてたら、それこそ、どえらいことになります。
(3)オタマジャクシやタニシなどの生き物の死骸
自然栽培は、基本、田んぼを干す作業、中干しはしないので、オタマジャクシなどの生き物は死ににくいですが、田んぼにはたくさんの生き物がいます。
タニシ、ドジョウ、オケラ、ミミズ、ガの幼虫、ゲンゴロウ、ヤゴ、○○虫と言われるものなど、挙げればきりがありません。
そういったものも当然、土にかえり含まれます。
それこそ、どける作業はできません。
(4)モミ殻
自然栽培では、自然栽培へと移行する間、田んぼの側にある自然素材をすき込むことは可とされています。
問題は「移行する間」です。
もみ殻には、雑草の種も含まれる場合があるので、雑草を少しでも減らしたい自然栽培で、圃場内で再利用する方は少ないかと思います。
弊社は田んぼには撒いていません。
もし撒いているとしたら、これも、立派な有機物です。
人の人力で撒いた有機物となります。
もみ殻はもともと稲の一部なので、撒いても問題ないとは個人的には思うのですけども、「自然栽培」という言葉の持つイメージとしては、どうなのでしょうか。
ということで、上記の(1)~(4)から、次の事が分かると思います。
「無施肥」「無肥料」とは、栄養である肥料分を与えないという事ではない。
言葉のイメージが先行したためか、結構誤解している方が多い所ですが、その方が悪いわけではなく、これがイメージで想像した農業と、実際にやっている人との理解のギャップの一つだと私は思っています。
つまるところ、自然素材の有機物を摂り入れるように働きかけるのならば、廃棄野菜を再利用した肥料(しかもバランスのよい土壌菌たちの入った)を利用した方が、環境問題や食品ロス対策、エコなどの社会貢献、地球環境・資源を守ることに繋がるのではないか。
そう思って私は「譲る米」とそれを育てる「譲る米農法」を確立しました。
これまた、「譲る米」の想いが出てしまいました。ややこしくなって、すみません。
②苗箱の床土へすき込む作業
自然栽培のマニュアルでの床土の作り方です。(弊社の床土は、違う方法です)
使うものは、
(1)田んぼの表層の土
(2)米ぬか
(3)燻炭(もみ殻を蒸して炭化させたもの)
一つ一つ見ていきますと、
(1)田んぼの表層の土
田んぼの表層の土には、有機物や、土壌菌が存在しています。
(2)米ぬか
窒素、リン酸、カリウム、ケイ酸、ミネラル、ビタミンなどが含まれています。
(3)燻炭(もみ殻を蒸して炭化させたもの)
炭化させているので、窒素分はありませんが、カリウム分、ケイ酸、ミネラル分が含まれています。
この(1)~(3)から、次の事が分かると思います。
土壌菌が活発になりやすい環境であるのと同時に、しっかりと窒素、リン酸、カリウムなどの栄養が残るように、そう設計されている。
肥料分のない床土だと、田植ができる丈まで生長しませんし、田植えができなくなります。
それならば、潔くちゃんとした有機肥料を使った方が、人件費、労力のコストを下げられるような気がします。
燻炭を作るのにも、火事などのリスクはありますし、買っても費用がかかります。
いま推奨されているスマート農業にも繋がりながら、それでいて自然栽培にも繋がります。
「ぼかし」は肥料ではないという考えがありますが、「ぼかし」も間違いなく肥料です。
一口に肥料といっても、
(1)普通肥料
(2)特殊肥料
に分けられます。
堆肥といっても、この(2)の特殊肥料に分類されます。(堆肥といっても、ちゃんと検査をして条件にあったもの)
ぼかしも、どちらかというと内容的には(2)に近いものです。
肥料です。ですから「ぼかし」を「ぼかし肥料」といいます。
肥料分がありますから、苗も育ちます。
肥料分が床土になければ、稲の丈は伸びません。
田植をするのには、ある程度丈が必要ですから。
肥料分を入れてないのに、育つというのは、ありえません。
肥料分の入った土を使っているという事です。
ここで、肥料分を一杯含ませれば、田植え後の根の張り、活着、その後の生長にも影響するものと考えますので、つまり、田んぼに肥料を意図して入れることも可能になるのです。
意図して入れた場合は、はたしてそれが、本当に「自然栽培」といえるのか、どうか。
徹頭徹尾「自然栽培」だったといえるのか、どうか。
そのへんは、まあまあまあ、と言っていい、部分なのか、個人的には気になります。
弊社の場合は、田んぼに肥料分を持ち込ませたくはないので、田植ができる丈の長さ、ギリギリの床土づくりを心がけています。
「これ以上は伸びないぞ。この長さで田植えしても大丈夫かな」
と心配になる時もありました。
また、こういう失敗も数百枚単位でしたこともあります。
実は、ぼかし肥料は作ることも難しければ、出来たものを苗箱に利用しても、微生物のコントロールは難しく、菌糸で真っ白になったり、菌糸で表面だけでなく、土の中までカチコチになり、根が土に刺さらず、水も入らず、苗作りが失敗に終わります。
白いカビだけならいいのですが、アオカビは厳しいです。
また、失敗すると、ガスの発生により、種や芽がダメになってしまったり、ウジ虫がわく時もあります。
コバエがいるとドキドキします。
なので自然栽培の苗作りは、百数十枚余分に作り、保険をかけています。
その分コスト、手間、種代がかかっています。
余った苗は、近所の方が家庭菜園に使ってくださいます。
ものすごく良い土づくりに役立つそうです。(再利用して頂き、助かっています)
正直、苗作りは、良質の有機肥料を使ってもいいのではないかと思っています。
もちろん、田んぼへ持ち越さない量、というこだわりは大切だとは思っています。
ですが妥協はしたくないので、譲る米では、廃棄野菜を利用した肥料(バランスのとれた土壌菌たちの入った)を床土から使用しています。
それでも、根を痛めるガスの発生や、カビの発生、特に青カビの発生のコントロールは難しいです。
バランスのいい土壌菌たちでも、土に含まれる酸素の量、水分の量によって活性度が変わります。
また土壌菌の活殺に繋がるのはph(ペーハー)です。
稲は少し酸性寄りの方が育ちやすいのですが、土壌菌はアルカリ性寄りの方が活発になります。
ここは難しいです。本当に難しいです。
いい働きをしてくれる好気性の菌が優位に立つか、悪い影響を与える嫌気性の菌が優位に立つのか、これだけは、やってみなければわからない、繊細な点です。
元気な苗になるのか、どうかで、田んぼに移植した後の稲が元気になるのか、どうかも変わってきます。
当然、実るお米の味や収量なども変わってきます。
そのリスクを考えた場合、苗は特別栽培米と同じ、有機肥料でいいのではないかと、やはり思ってしまいます。
余分に苗を100枚以上作る、一箱1,000円と安く見積もっても、10万円以上かかります。
これ以上、お米の販売価格を上げたくないので、悩む所です。
だからこそ、「自然栽培」の「自然」の意味が大切になってくるのです。
作り手がどうのように「自然」の定義を考えているのか。
実際に食べられている方が、どのように「自然」をイメージされているのか。
今回のテーマ、
「2つの自然栽培のお米がある。どちらがより自然栽培と思いますか。「自然」に求めるポイント。」
この問いかけの理由の一つが、この苗づくりにあります。
「無施肥」の聞こえはいいかもしれませんが、「肥料分(栄養分)は与えています」から。
実態とイメージのギャップは私は心配になります。
私は、
「ありのままの姿を、食べられる方もイメージして頂いて、食べて頂くこと」
これこそが、本当の食育、食の安心・満足に繋がると信念を持って米作りに取り組んでします。
実際のお米の姿と、お客様のイメージを合致させる。
ここが、私の求める「真の百姓」「本当の米農家」の姿だと、思っています。
子供に誇れる、大きな背中を見せれる、そういう生き様だと信じています。
8.「放置栽培」と「自然栽培」は違う。
実は、これを勘違いしている方は、多いのではないかと思います。
農業の現場と、イメージのギャップを感じる所です。
「自然栽培」を「放置栽培」と勘違いしている場合が多いのではないかと、心配になります。
「自然栽培」は、「不耕起栽培」と思いこまれている方も少なくないように思われます。
木村さんの提唱する、自然栽培は、放置栽培、不耕起栽培とは違います。
微生物群と農作物が、共存・共栄できる環境づくりのために、人の「人力」を加える。
「人為的に整える」ことを是としています。
人の手を加えないのが、「自然栽培」ではないのです。
微生物群が働ける環境を、人為的に整えることが、自然栽培の肝となっているのです。
私も改めて調べてみて気付いたことなのですが、私はてっきり、虫との共存共栄もあるのかと思っていました。
もちろんあるのでしょうが、自然栽培のポイントの重きは、「微生物群との共存共栄」にあることを知らされました。
そのためならば、耕起もするし、人の「人力」も加える。
その結果、昆虫などの生態系もうまいバランスで整う。
そういう考え方なのだなあ、と勉強になりました。
ただ、微生物群のバランスが整うまでには、時間がかかります。
3~4年ぐらいかかると、マニュアルには書かれていましたが、私の実感では、稲作の場合ですが、短くて4~5年でしょうか。
しかも、その後も維持に手間がかかります。
油断すると、いえ、油断していなくても何かが要因で失敗すると、その年は壊滅的なダメージを受けます。
手間がかかるという事は、人の労力、機械の費用、燃料費がかかるという事で、お金がかかります。
その点「譲る米」は、誰でもが、稲本来の力で育ったお米を、安価に食べて頂けるように、工夫と研究を重ねた栽培方法で育てました。
微生物群のバランスが整う時間を省略するために、また、その維持にかかる負担を軽減するために、よい働きをする微生物群を直接、土壌に入れるのです。
それが「譲る米農法」のポイントであり、肝です。
稲刈りが終わった後、土壌菌入りのエコ肥料(廃棄野菜を再利用した肥料)を田んぼにまき、秋起こしし、6ヶ月ほど、半年寝かせる。
この半年の間に、元々いた土壌菌とタッグを組んで、土の中の有機物を分解し、土を育ててくれます。
その間の田んぼの土の管理も、気が抜けませんが、「自然栽培」に比べれば、労力も、機械の消耗も、燃料の消費も抑えられ、当然、二酸化炭素を空気にバラまくことも抑えられます。
CO2の観点から見れば、「譲る米農法」の方が、「自然栽培」より環境に優しいです。
その上、廃棄野菜を再利用したエコ肥料を使用しています。
それでいてコストも抑えられるので、SDGsに注力されている今の時代にあっています。
自然栽培はできる人は限られますが、「譲る米農法」であれば、誰でもが実践しやすい農法です。
今後、「譲る米農法」が増えれば、その分、CO2も減らせ、廃棄野菜も再利用するので、環境にも優しくなります。
「自然栽培」も「譲る米」も、ともに「エンドファイト」に期待しているのですが、「エンドファイト」については、また別の機会に触れたいと思います。
9.「自然栽培」と「譲る米」。どちらが、より「自然」のイメージに近いですか。
ようやく、今回のテーマにたどり着きました。
2つの自然栽培のお米がある。どちらがより自然栽培と思いますか。
今まで「自然栽培」と「譲る米」の比較をしてきましたが、大きな違いをまとめます。
◆自然栽培
①秋起こしせずに放置
②無施肥
③無農薬
④無施肥、無農薬なので、栄養を雑草に盗られないように、水田内の除草作業を何度もする。
(根っこが切れるリスクが増える)
⑤雑草に栄養が取られながら、根も傷つけられるので、稲がストレスを感じやすい。
⑥農薬を使わないので、畦畔の草刈り、除草作業で、かなり燃料を使う。慣行栽培よりもCO2は多くなる。
◆譲る米
①秋起こしする。
(土壌菌入りの、廃棄野菜と米ぬかを利用した肥料をまいてから耕起し、6ヶ月ほど寝かせる)
②上記以外肥料を与えない。
③田植え時に農薬3回(3成分の事)、その後雑草の状況により2回(2成分)を幼穂形成が始まる前までに使う(令和3年産の場合)。
④水田内になるべく入らないようにする。
(根っこが切れるリスクが減る)
⑤追肥もしない、雑草にも栄養を取られない、根も元気だから、稲のペースでストレスなく、大地の栄養をしっかりと吸い上げることができる。
⑥農薬を適切に使うので、燃料の消費や労力を減らせる。大気中にバラまかれるCO2を減らせる。
完結にまとめると、
◆自然栽培
田植後に、畦はもちろん、水田内での人為的な作業が多い。
大事な時期に根を痛めやすいので、稲の生長に不安が残る。
◆譲る米
田植え前の、土づくりに手間をかける。
田植後は、あまり水田に入らない。
大事な時期に根を傷つけず、追肥もしないので、稲本来の力を存分に発揮して、稲のペースで育ち、元気で美味しいお米を稲が育ててくれる。
今回のテーマの問いかけに戻ります。
「自然栽培」と「譲る米」の2つの栽培方法をみて頂いてお尋ねします。
どちらが、よりイメージしていた「自然栽培」に近いですか。
「自然」のイメージに近いのはどちらですか。
「稲本来の力」を引き出せるのはどちらでしょうか。
答えは人それぞれぞれなのはもちろんですが、その上であえて、私は「譲る米」を計画しました。
土壌菌に重きを置くのは「自然栽培」も「譲る米」も同じ。
あとは、「稲本来の力を引き出せる」農法。
田植後の稲の生長を邪魔したくない。
根っこを含めた稲の生活圏に人間が入りたくない。
その方がより「自然」なのではないか。
私はそう思いました。
私だけではなく、そう思っている農家の人は意外に多いのではないかと思います。
だから「自然栽培」に2つあってもいいのではないかと。
従来の無施肥・無農薬のイメージの「自然栽培」と、
土壌菌入りの、廃棄野菜を再利用した肥料と農薬を適切に最低限使った「自然」に近い「栽培」方法。
同じ名前では混乱するので、あえて主役は土壌菌たちであるという「譲る米」農法。
食べられる方のイメージにあった、そんなお米を選んで頂けるように、お米作りを考えていきたいと思います。
楽しんで「米活」をして頂けたらと思います。
せっかくなので、「譲る米」の紹介を図入りでさせて頂きます。
written by てぃ
こんにちわ。
趣味で野菜を作りたいといろいろと考えています。
そのまま食べても甘いニンジン。
軽く焼いて食べるだけで美味しいピーマン。
だしをかけてレンジでチンするだけで美味しいオクラ。
トロトロの液のでる下仁田ネギ。
とれたてをその場で丸かじりが最高のキュウリ。
そんな思いを巡らしながら日々お米づくりを勉強しています。
「もっとお米のことを考えろっ!」!って叱られそうですが、
美味しい野菜と、美味しいご飯の組み合わせって、最高の栄養源、元気の源って感じがしません?
そんな私が、日常の日々の中で見たこと、思ったことなどを皆さんにご紹介させて頂ければなぁと思っています。
こうやってお米って作られるんだぁ、農家の人っていっつもどんな事してるんだろう?
へー、こんなこともしてるんだぁ!
そういう新たな一面というか、そういう驚き?のきっかけになって頂けたらと思います。
これからもよろしくお願いします。
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