こんにちは。(有)ばんばのスタッフのタキタです。
今回は、「農薬を使わないこしひかり」について紹介します。
ばんばでは、一部圃場にて、平成9年から農薬を使わずにお米を育てています。まずは、その田んぼを紹介します。
ここが無農薬栽培の田んぼです。慣行栽培(一般的な栽培方法)の田んぼと比べると株が抜けていたり、所々に雑草がみられます。
農薬を使わずにお米を育てるには、そのほかの方法で虫、病気、草などに対処する必要があります。とくに除草作業に人の手がかかります。田植え後すぐに、稲の生長とともに農家泣かせのいろいろな雑草が伸びてきます。特に稲の株に紛れて生えているオモダカなどを1本1本探し、抜く作業は、なかなか骨の折れる作業です。ほかにも、乗用の機械や歩行型の機械で除草を行います。農薬を使用すれば短時間でできることを、数人がかりで数回やらなくてはなりません。
農薬を使わないで育てるって大変なんですね....。
ここで、「農薬を使わないこしひかり」について説明する前に、農薬を使わずに栽培するデメリットを挙げます。
・害虫が発生する
・病気が発生する
・上記による隣接圃場からの警戒の目
・収量が減る
それでも、ばんばでは、無農薬栽培にこだわります。
では、無農薬栽培について社長にインタビューしたいと思います!
― 無農薬栽培の前は、何をしていたのでしょうか?
慣行栽培、減農薬栽培に取り組んでいました。現在も、作付け面積の大部分がこのような栽培方法です。
― 無農薬栽培に踏み切ったのは、なぜですか?
平成6年(平成の米騒動の年)1月の「無農薬のお米をください。」という1本の電話がきっかけでした。
自分にできるかできないか、いろいろ悩みましたが、「案ずるより産むが易し」まずはチャレンジしてみることにしました。最初は、20aから始めることにしました。現在は自然栽培を含め5.4haまで増えました。
ほかにも、
・離乳食として
・玄米食へ移行したいけど、胚芽の部分に農薬が残留しやすいと聞いて
・「最近疲れているから、体にいいものを食べたい」
など、お問い合わせをいただいています。
― なぜ、農薬や化学肥料を使わないお米をつくるのか?
農薬や化学肥料を使わない理由は「安全」だからです。前述したお客様からの問い合わせにあるように「食の安全」が求められています。また、ばんばでは「安全」だけではなく、農薬などを使わないことでお客様に「安心」を届けていきたいと考えております。
ここで、一つお伝えしたいことがあります。農薬には毒物と呼ばれるものもありますが、現在、市販されているものは厳密な検査を受けて人体に害が出ないように成分が調整されており、使用方法も徹底されています。「農薬=体に悪い」わけではなく、必要に応じて減農薬栽培、慣行栽培では使われております。スーパーなどでは見栄えが優先されるので、高い品質で十分な収穫量を確保するために肥料や農薬が必要となります。
ここで、一般的に農家が農薬を使う理由を挙げます。
・害虫の駆除
・病気の予防、抑制
→生産コストの削減、品質の向上、収穫量の安定
日本の農業では、戦後の1950年代より、「雑草防除」や「病害虫防除」のために、農薬を使ってきました。しかし、近年の健康ブームもあり減農薬栽培や無農薬栽培が注目されています。
みなさんは、こんなお米を食べたいと思いますか?
この黒い斑点は、カメムシという虫によるものです。カメムシが、稲の穂が出た後、硬くなるまでの柔らかい時期に、栄養を吸うことで、黒い斑点がお米にでます。慣行栽培では、穂が出た後、農薬を数回散布して、カメムシ類を駆除します。
茨城県農林水産部HPより
ばんばの無農薬栽培では、カメムシにとって田んぼより住みやすい環境を畦や農道につくります。少し高め(長め)に草刈りをし、虫が住めるようにします。そこには、いろいろな虫が寄ってきて、自然の生態系が作られ,バランス良く虫たちが生活しています。それで、カメムシの被害は減りますが絶えません。そこで、籾摺り後に黒い斑点米などの着色米を取り除くために色彩選別機を導入しています。機械による選別なのですが、完璧では無くたまには残ることもあります。ご理解ください。
この田んぼを見てください。
アオミドロという藻類の植物が繁殖して、稲が倒れたり株が抜けています。田植え後に雨が降らずに天気がいい日が続くと、田んぼの表面が緑色の藻でおおわれてしまいます。アオミドロは稲の成長の妨げになってしまうのですが、一度発生してしまうと駆除するのがとても難しい植物です。この時期の田んぼは、水温が25℃~35℃くらいになり、肥料を散布しているので栄養もあり、日照時間も長いためにアオミドロが発生しやすい状態になっています。慣行栽培の田んぼでは、田植え時に除草剤を散布しているので、藻の発生を抑えることができます。
ばんばの無農薬栽培では、田んぼの水位を調整したり、人の手で藻を取り除いています。それでも、藻の繁殖力にはなかなか及びません。
このようにばんばでは、農薬ではなく、畦などの環境の整備、人の手による除草、色彩選別機の導入などによって、無農薬栽培を確立してきました。
― 「安全な米」は何を基準に判断する?
安全は目で見ることはできません。
「残留農薬がない」ことが基準でしょう。ばんばの無農薬栽培では「農薬を使っていない」のでその心配はありません。また、田んぼについても、3年以上農薬は使っておりません。
(国が定めた有機JASの規格では、原則として3年以上化学肥料・農薬を使用していない(一部の農薬については使用が認められています)ことと定められています。)
また、ばんばでは、「どんな場所でどのようにつくられたのか」「どんな生産者によって作られているのか」を知ってもらい、お客様の安心に寄り添うことができればと考えております。
― そもそも農薬って?
「農薬」と聞くとどのようなイメージですか?
「カラダに悪い」、「危険」という漠然としたイメージではないでしょうか?
農薬は農薬取締法により以下のように定義されています。
1病害虫の防除に用いる薬剤
2成長調整に用いる薬剤
3病害虫防除に利用する天敵
この定義によると、農薬といっても身近な食料品(重曹や食酢)から害虫を食べてくれる虫など(テントウムシやマルハナバチ)、化学薬品まで多様です。ひとまとめに「危険」とせずに成分や用法を確認して使っていきたいですね。
私たちも病気になると薬を飲みますし、調子を整えるためにサプリメントを摂ります。同じように稲にもそれらが必要な時があります。それが農薬で、薬品から自然由来のものまであります。
それでも、自然由来ではない農薬は、使わなくてすむなら使いたくないとは思いますが....
ばんばでは、最初、合鴨をつかった無農薬栽培を行いました。
― どうして合鴨農法を選ばれたのですか?
無農薬での栽培方法を模索している頃、テレビで合鴨による米作りが紹介されていました。
鴨の雛のかわいらしさと循環型農業という言葉にひかれて、「これだ!」と感じ、合鴨での栽培を始めることにしました。
その後、合鴨農法から機械や人による無農薬栽培に転換しました。
― 合鴨農法をやめて何が変わりましたか?
7年目に鳥インフルエンザが流行し、風評による問い合わせ、買い控えが後を絶ちませんでした。そこで、思い切って機械や人による無農薬栽培に転換することにしました。
稲が、今、何をしてほしいのかを人の目で見て、人の手で作業することで、田んぼとの距離が縮まり、今まで以上に愛着がわきました。また、その時々の天候にも大きく左右されるため、天気と稲や田んぼの反応をみながら、考える時間が増え、「真剣に自然と向き合うこと」を考えるようになりました。
― 機械や人による無農薬栽培で苦労した点は?
なんといっても除草ですね。
機械除草に転換後、最初の数年はうまくいきましたが、やはり自然相手、彼らも生き残りをかけて、執拗に出てきます。最初はヒエ、次は、ホタルイ、そしてコナギ、その他いろいろな草が出てきました。でも、よく見ると田んぼによって、時期によって生えている草の種類が違うことがわかりました。雑草の性質、生える条件などを観察、推測し次の一手を考え、除草の方法をいろいろと変えて、雑草ごとに対策をとるようにしました。それでも残った草は、手で取ります。このときは除草剤のありがたみを感じました。
― 草だけでなく病気や虫に対してはどのような対策をとりましたか?
稲の代表的な病気である「イモチ病」や「モンガレ病」については発生したことがありません。また、虫については、上述した通り、畦などの環境を整備したり、収穫後に色彩選別機を使用し着色米を除いています。
稲につく代表的な害虫は、ウイルスのばい介をしたり、稲を枯らす「ウンカ」、茎の中を食べる「ニカメイチュウ」、斑点米の原因となる「カメムシ」、根を食べる「イネミズゾウムシ」です。稲の害虫は、その他にもたくさん存在しますが、クモやトンボ、ハチの仲間には稲の害虫を食べて稲を守ってくれる益虫もいます。畦にそれらの益虫が好む草を残したり、木を植えたりもしています。
― 今後の目標は何ですか?
等級が良くなかったり、収穫量が少なかったりと「農薬を使わないという選択は、生産性とは逆ベクトル」と思われがちです。しかし、その「無農薬栽培」にさらに「無肥料」という付加価値をプラスした「自然栽培」での収量の安定を目指します。
これからも、基本に忠実に、愛情込めて育てていきます。
また、ばんばではお客様からの問い合わせや評価などの反応をみながら、今後の作付けや栽培方法を検討しています。最近では、お客様からおいしい食べ方や料理のコツを教えてもらうこともあり、いい刺激をいただいております。これからもこのようなつながりを大切にしていきます。