アイルランドポリネータプラン:農場編ガイドブックのご紹介
作物というものは、農家が「作っている」というより、本来、自然が作るプロセスにちょっとだけ介入しているだけです。それなのに、大きな顔をしては、農薬をまいたり肥料を播いたりして自然のプロセスをぶっこわして知らん顔しています。昔は、それほど破壊力が大きくなかったからよかったのですが、昨今は、そういう甘えは通用しなくなりつつあることが、地球で起きているいろんなやばいことから感じ取れます。
とはいえ、農業というものは、どうしても自然を破壊しなくては成り立たちません。そうであれば、なおさら、自然に対するケアも農家がおこなうべきなんじゃないか?と常々思っているわけです。
そんなこんな考えておりましたら、出会ったのが、アイルランドポリネータプラン。アイルランド全体で、ハチを保全しようという取り組みです。えらそうですが、わが意を得たり。という思いでした。
というわけで、今回のブログでは、アイルランド国立生物多様性データセンターの許可を得て、アイルランドポリネータプラン農場編ガイドブックの翻訳を掲載することにしました。ポリネータプランでは、さまざまな立場で参加ができるようにいくつかのガイドブックが提供されていますが、そのうちのひとつ、農場編ガイドブックは、農業従事者がハチを守るためにできることを具体的に説明しています。なので、農業者向けのガイドブックなわけですが、農業に直接関わっていない方にも読んでいただけると幸いです。
ガイドブックのオリジナルはこちらのpdfファイルでどうぞ。こちらには、きれいな写真がたくさん掲載されていますので、英語はちょっと・・という方も是非。
翻訳ここから
ポリネータを助けるためにできること(農場編)
ポリネーション(花粉がめしべに届くこと)。それは、作物や野生植物の繁殖サイクルにとってとても大切です。また、アイルランドにおける農業や観光そして海外輸出といった経済活動に大きな利益を与え、さらには、私たち人間の健康や幸福をもたらしています。
なぜポリネータが必要なのか?
ポリネータとは、花粉を花から花へ移動させ植物の繁殖を助ける動物たち(ここでは特にハチ)のことです(訳者補)。受粉が必要な作物を育てている農業従事者や、果実や野菜を自分で育てたいと望んでいる市民にとって、ポリネータは、とても大切です。また、たとえ、あなたが現在作物を育てていないとしても、未来の世代の人たちが作物を育てられるよう、ポリネータを守る必要があるのです。
さらに、作物だけでなく、アイルランドに生息する野生の草花の78%が昆虫による受粉に頼っています。私たちの色彩豊かな美しい風景は、時にはうるおいのある生活の場となり、時には旅行のための魅力的な目的地となり、また時には海外への農産物の輸出のための重要なセールスポイントとなっています。しかし、ハチたちがいなくなってしまえば、そうしたものは失われてしまうのです。
アイルランドポリネータプラン 2015-2020
残念なことに、アイルランドでは、ポリネータが減少しています。この問題は深刻です。アイルランドに生息する98種のハチのうち三分の一が絶滅の危機に瀕しています。もし、将来にわたって、ハチたちがこの島に存在することを望むなら、ポリネータにとって好ましい方法で景観を管理し、種多様性が高く、花々の豊富なハビタットのネットワークを作り出す必要があるのです。
アイルランドポリネータプラン2015-2020は、農家や議会、地域コミュニティ、企業、学校、植物園、および輸送機関といった80を超える政府および非政府組織に支援されています。これらの組織は、ポリネータのための景観管理というゴールを達成し、アイルランド島全体をポリネータにやさしいものにするべく、81の行動計画を分担して取り組んでいます。
ポリネータプランがうまくいくために、私たちがもっとも頼りにしているのは、田園地域の守り人たる、あなた方、つまり農家の方々です。
農場に生息するポリネータ
伝統的な農業は、ポリネータに好ましいものでした。なぜなら、野生の花々が豊富に咲いていたからです。干し草用の牧草地の草花、穀物の畑には一年生の草本、また、農薬を使わないので、小道や圃場のすみにはより多くの草花があり、機械を使わないため生垣にも多くの花がさいていました。加えて、私たちは自分たちのために、果樹や野菜を育てるのがふつうのことでした。
ところが、過去50年の間に、農業の進歩はすっかり花を減少させてしまいました。そして当然の結果として、今やハチたちも非常に少なくなってしまったのです。もちろん、ポリネータプランは、昔日を取り戻そうとしたり、時代を逆行しようとしたりするものではありません。そうではなくて、現代の農村景観において、ポリネータのために十分な食物資源を提供するための新しい方法を編み出そうというものなのです。
アイルランドに生息する98種のポリネータたち
- ミツバチ 1種
- マルハナバチ 20種
- 単独性ハナバチ 77種
行動を起こすことで何が得られるか?
- 高級品市場において重要なアピールポイントである、「アイルランドではよい環境で作物が作られている」というイメージを強化する。
- アイルランド食糧委員会(Bord Bia)の品質保証プランの要素である持続可能性基準の一役を担う。
- 収穫量を増やすことにより、価値生産を最大化する。
- 多くの場合、時間とお金を節約できる。
- 農薬や肥料を使用しないバッファーゾーンを作ることにより、天然の有害生物防除プロセスを向上させたり、水環境を改善させたりといった、さらなる利益がある。
- あなたの子供や孫が将来農業をするかどうか選択する余地を残すことができる。ポリネータに依存する多くの作物の価値はたった10年の間に20%近くまで上昇している。気候変動ときまぐれな国際市場のため、将来農業をする世代にとってもっとも利益のあがる方法を予測することは困難である。あなたの土地を今後どのように経営するかにとって、ポリネータによるサービスはより重要なものとなるだろう。
- 健全で持続可能な農場の生態系を維持し、あなたの土地をより好ましい状態におくことができる。
ABPフードグループでは、健全な生態系がもつ農業食品分野への影響を理解している。アイルランドポリネータプランは、使いやすくて検証可能なフレームワークを提供してくれる。それは、生物多様性のための私たちの行動の記録を残すことを可能にし、変化をもたらす。私たちの自然環境の完全さは、持続可能な未来のひとつの支柱であり、わたしたち全員に関わりがあることだ。
ABP フードグループ
だれがポリネータなのか?
ポリネータが、ある花の花粉を、ほかのある花まで運び、受精およびそれに続く種子の結実や果実の生産を導きます。これは、生産者にとっては質の高い農作物生産のため、消費者にとってはさまざまな果実や野菜を適切な価格で購入するために、不可欠なプロセスです。さらに、野生生物にやさしく、植物の多様性の高い自然の景観を生み出しています。
アイルランド島における昆虫によるポリネーションのほとんどは野生のハチによって行われています。アイルランドにおいて、飼育対象となっているハチは、ミツバチ1種のみで、その他97種はすべて野生のハチです。このうち、20種はマルハナバチ、77種は単独性のハナバチです。研究によれば、信頼できるポリネーションサービスにおいて、ミツバチ個体群だけでなく、野生のハチや他の昆虫の数や多様性が、重要であることがわかっています。
ポリネータが生きていくために何が必要なのか?
食物: ポリネータの減少においてもっとも重要な原因は食物の不足です。ハチは、花から得られる花粉と蜜だけを食物としています。蜜は成虫のエネルギー源となり、花粉は彼らの幼虫に与えられます。健全でバランスのとれた食物を獲得するためにハチたちは、3月から10月にかけて、種の異なるさまざまな花を利用する必要があります。特に、春先は、かれらにとって食物不足のリスクがもっとも高い季節です。
住みか: マルハナバチは、長く伸びた草本の根もとに巣をつくります(それは生垣の近くにあることが多いです)。ほとんどの単独性ハナバチは、土の露出した場所に小さなトンネルをほって巣とします。また、いくつかの種は、石やコンクリートの壁あるは木材の開いている穴を利用しています。
安全性: 殺虫剤の被害を与えないようにすることが必要です。また、彼らが食物を採集したり住みかとする場所では、除草剤や殺菌剤が使われないようにすることが大切です。
ポリネータと花の一年
春 | 夏 | 秋 |
---|---|---|
マルハナバチの女王が冬眠から目覚め、単独性ハナバチが出現するとき、タンポポやヤナギのような春早くから開花する植物が重要です。これらの花は、マルハナバチの女王が営巣し産卵するのに必要な食物を提供します。 | ポリネータは、穀物、果実、野菜の花々を受粉して回ります。しかし、花粉を多く生産する他の植物によって彼らの食物が補われる必要があります。次の世代が生き残れるよう、夏中をとおして、安全な巣作りの場所が必要です。 | マルハナバチの新しい女王は冬眠の前に多くの食物を必要とします。ツタやキイチゴ類は、このとき重要な食物資源を提供します。野生のハチは冬のあいだ冬眠します。 |
このガイドブックは、農家の協力と農業団体の監修のもと作成され、ポリネータを助けるためにあなたが実行できる5つのアクションについて説明しています。これらすべてのアクションは、いずれも証拠に基づいており、科学的な研究によりポリネータに有益な影響をあたえることが明らかにされています。これらのアクションは、自然によりそって農業をいとなむものです。多くの場合、それらは、「すること」ではなく「しないこと」です。なぜなら、自然そのものが、代わりにその働きをしてくれるからです。
ハチにやさしい農場のための5つのアクション
- 花咲く生垣を維持しよう
- 農場のまわりに野生の草花をさかせよう
- 野生のハチが巣作りする場所をととのえよう
- 肥料をできるだけつかわない
- 殺虫剤をへらそう
これら5つのアクションの詳細についてこれから説明していきます。
アクション
花咲く生垣を維持しよう
生垣は、アイルランドの農村の景観を特徴づける存在です。それは、海外輸出おいてアピールとなるイメージにとって重要でもあります。
さらに、たくさんの花が咲く生垣は、ポリネータに、食物や住みか、移動のための回廊(コリドー)を提供し、彼らが生き残るために大切なものです。
ハチのためにすべきこと
- 生垣に花がさくようにする。
- 生垣に少なくとも一本ずつ、サンザシ類の樹木が成熟に達するまで育てる。
- ポリネータの好む樹木を農場の周りにてんてんと植える。
あなたの農場にもたらされること
- 健全な生垣を維持することによって国際市場におけて環境にやさしい農業というイメージをたもつことができる。
- 生垣は、動物たちにとって、寒風や夏の強い日差しを避けるための避難場所になり、病気(授乳熱、草食性テタニー、乳腺炎、熱射病、光感作)を引き起こすストレスを和らげる。
- 牧場では、生垣により排水がよくなり、病原菌や肝臓ジストマのような病気を引き起こす微生物を減少させる。
- 生垣があると、動物が移動しにくくなることにより、接触感染による病気の蔓延を防ぐ。
- 生垣により、風速が弱められ、土壌乾燥が抑制される。その結果、草本の成長が旺盛になるため、放牧された動物たちのエサ資源が質・量ともに向上する。
- 生垣が、ハチ以外のさまざまな益虫の住みかとなり、天然の有害生物防除プロセスが働く。
- 生垣は、あなたのプライバシーを守り、匂いや騒音による公害を和らげる。
農家にとって、自然とともに働けることは、長所のひとつだ。私たちは土地と植物を家族の一部と見なしている。私たちはみな仲間なんだ。私たちには、適切な情報が必要だ。もし、わたしたちが何をしたらよくないのかを知らなければ、それを変える必要があるのかどうかもわからない。
ポリネータにもたらされること
農村地帯では、ポリネータが生存していくために生垣がとても大切です。健全な生垣は、春から秋にかけてずっと、食物(花)や、巣を作ったり冬越しをするための住みか、移動拡散のための回廊(コリドー)を提供します。この活動では、あなたの農場にある生垣を守りさえすればよいのです。ただし、野生の花が咲くようにしてあげましょう。
700万の牛に毎日ちゃんと食べさせつつ、野生の花やハチ、野生動物のためのスペースを作るというのは、常にチャレンジだといえる。しかし、わたしたちがうまくやれれば、それは子供たちに残すことができる大いなる遺産だ。
Agricultural Advisor
ポリネータにやさしい生垣とはどんなものか?
- ポリネータに食物を提供する野生の樹木(高木と低木)が複数種生えている。
- 毎年花がさくように管理されている。
- 周囲1.5 – 2 mの範囲では、肥料や殺虫剤が使用されておらず、草本が繁茂しマルハナバチの巣作りの場所となる。
- 根元に、土の露出した南あるいは東向きの小さな地面があり、単独性のハナバチの巣作りの場所となる。
マルハナバチの女王は、早春、最初の子供たちを育て上げるために6000ものの花を訪花する必要があります。このとき、生垣に咲く花々はとても重要な資源となります。もし、春にハチたちがよいスタートをきれないと、結果的に、夏の間作物に必要なポリネータが不足することになります。
生垣に咲くポリネータにとって好ましい野生の花
- スモモ (3月-5月)
- セイヨウミザクラ (4月 – 5月)
- ヤナギ (3月 - 5月)
- サンザシ (4月 – 6月)
- ハナカイドウ (5月 - 6月)
- ニワトコ (5月 – 6月)
- ナナカマド (5月 – 6月)
- ニシキギ (5月 – 6月)
- キイチゴ・ブラックベリー (5月 – 9月)
- バラ (6月 – 8月)
- ツタ (9月 – 11月)
生垣管理のアドバイス
剪定をして花を咲かせよう
- 生垣にサンザシの成木を残しておく。
- 毎年伐採すると花が咲かなくなるので、可能なら3年に一度切るようにする。
- 今年きる場所、切らない場所ができるようにローテーションで伐採する。そうすれば、あなたの農場のどこかで花が咲いていることになる。
- 伐採は、11月から翌年1月の間に行う。それができなければローテーションで伐採する。
- 夏から秋にかけての食物を確保できるよう、イチゴ類やツタが生えるようにしておく。
- 道路にそった生垣では、ポリネータの安全のため、内側(道と反対側)に花が咲くようにする。
- 生垣の高さをできるだけ高くする。少なくとも2.5m以上に。
- 生垣の一部分には手を付けず、サイドのトリミングだけ行う。
アクション
農場のまわりに野の花を咲かせよう
作物を生産しない場所を過度に管理するのをやめて、野の花を増やしましょう。そうすれば、ポリネータのための食物を年間を通して供給することができます。
ハチのためにすべきこと
- 道ばたや川沿い、圃場の周囲など作物を生産しない場所にいつも野生の花をが咲いているようにする。
あなたの農場にもたらされること
- 野の花が農村の景観を彩ゆたかなものにしてくれる。生活し働く場所がより心地よいものとなり、対外的なイメージもよくなる。
- 農場の生物多様性を高める一方、経済的に失うものはない。
ポリネータにもたらされること
- ハチたちのライフサイクル全体において利用可能な花の種類が増えるので、生き残る可能性が高くなる。野生のハチは貯蜜しないので、数日以上花がない状態に耐えられない。特に生垣の樹木の花が終わった後の夏の間は野の花は重要な資源となる。
大切な野の花
- タンポポ
- オドリコソウ
- ハナウド
- カラスノエンドウ
- フランスギク
- ウツボグサ
- ミヤコグサ
- クローバ
- キバナレンリソウ
- イヌゴマ
- マツムシソウ
- アザミ
作物を作らない土地のポリネータにやさしい管理の仕方
- 野の花が咲き終わった秋に一度だけ草刈をする。土壌があまり肥沃にならないように刈った草はとりのぞく。野草は貧栄養な場所で繁茂する。農薬をまいたり、施肥したりしない。このように管理すれば野の花は周年にわたりどんどん増えていく。もしより頻繁に刈らなくてはならないとしてもできるだけ回数を減らす。すくなくとも、春のたんぽぽや夏のクローバがさくように。
- きれいにしすぎないようにする。人とは全く異なる世界像をハチたちは見ており、また必要としていることを忘れてはならない。
- 有害な雑草の管理が必用な場合でも、手で引き抜くか、スポット状に処理すること。
自然に花がたくさん咲いているところを保全する
古くからある牧場地、湿原、池のまわり、林縁、沼地など自然に野の花がたくさん咲いている場所を保全しましょう。このような場所は、ポリネータやその他の野生生物にとって大切です。将来、このガイドラインにおいて、より自然度の高い農場がポリネータの生存にとって重要であることについて述べる予定です。
干し草のための牧草地 Hay meadows
干し草のための牧草地を維持することは、歴史的あるいは文化的に重要なだけでなく、ポリネータや野草、その他の野生生物を保護するためにも重要です。天候が良くなくて干し草が乾燥しない場合には、半乾サイロ貯草にすればよいのです。大事なことは、野の花が咲くまで待って、サイレージのための刈取り日を遅らせることです。
野の花の量が倍になると、ポリネータの数は16倍になるという研究もあります。
アザミは、花の間にはハチに、種ができると鳥にとって食物を提供します。キイチゴとツタは、夏の終わりから秋にかけて大切な食物資源となるので、これらが繁茂する場所をとってきましょう。
農場内の庭は、ポリネータにとって大切な場所となります。また、家族のために果物や野菜を育てれば、お金を節約できるうえに、あなたの子供が自然にふれる機会をあたえてくれます。フサスグリ、ブラックベリー、ラズベリー、イチゴ、トマト、ズッキーニ、豆類、かぼちゃのようなポリネータの好む作物を育てましょう。また、リンゴやスモモのある小さな果樹園をつくりましょう。このとき、早生や中生、晩生の種を混ぜて植えれば開花時期をばらつかせることができます。
春から秋にかけて花を咲かせる花卉や低木をうえましょう。これらの植物もハチに食物を提供します。また、こうした庭には、殺虫剤や肥料を使わず、ポリネータのセーフサイトにしてあげてください。
アイルランドポリネータプランのガイドラインには、ポリネータにやさしい庭をつくるためのドキュメントが用意されています。このドキュメントには、ハチに食物を提供する花木や花卉、さらに球根植物のリストが掲載されています。www.pollinators.ieをごらんください。
アクション
巣つくりの場所をととのえよう
ハチの巣つくりのためのハビタットを整えるのに、難しいこともないし、費用もかかりません。野生のハチは大きなコロニーを作らないので、過剰に警戒する必要もありません。野生のハチは、人間に興味がなく、攻撃的でもありません。
ハチのためにすべきこと
- マルハナバチ、土に穴を掘るハチ、壁にあいた穴を利用するハチなど様々なハチのための巣作りのために場所を提供する。そうした場所では、殺虫剤を使用しない。
あなたの農場にもたらされること
- 野生のハチが多くなれば、あなたの農場の果実や野菜が実りも多くなる。
- ハチ以外の昆虫のハビタットも同時に確保され、天然の有害生物防除に繋がる。
- コストがかからないうえ、子供でも参加することができる取組である。
ポリネータにもたらされること
- 冬眠や巣作り、繁殖のためのセーフエリアを野生のポリネータに提供する。
- 食物のための花がたくさんあっても、巣作りのための場所がなければハチはその場所でいきていけない。巣作りのための場所をつくるときは、食物となる花の近くになるよう、よく考えること。
マルハナバチはふつう巣から1 kmの範囲で採餌を行います。一方、単独性ハナバチは、300 mの範囲で採餌を行います。研究によれば、巣と食物を提供する花との距離が150 m増加すると、子の生存率が70%減少することが示されています。
巣の場所を提供する: マルハナバチ
アイルランドに生育する20種のマルハナバチは草本がよくしげった場所に巣を作ります。
- 生垣の根もと、小道の際、圃場のまわりや角に長い葉をもつ草本を残し、3月から10月の間は刈りはらわない。
- マルハナバチのコロニーは10月から11月におわるので(繁殖した女王は冬眠に入る)、晩秋から冬のうちに、これらの場所の管理を行う。
巣の場所を提供する: 土に穴をほる単独性ハナバチ
アイルランドに生育する62種の単独性ハナバチは、土が露出した場所に小さな穴を掘って巣を作ります。彼らは、排水の良い平らな地面を好み、特に南あるいは東向きで雨風のあたらない土手の斜面に巣を作ります。
- 生垣の根もとの南あるいは東向きの地面を残すようにする。
- 地面の表面を削って新しい土手をつくり、安定した水はけのよい場所を作る。土壌侵食しやすい場所や水の流れがある場所を避ける。
- 砂利がある場所なら、それを平らにしないでおくと、これらのハチのためによい巣づくりの場を提供する。
巣の場所を提供する: 穴を利用する単独性ハナバチ
アイルランドに生育する15種の単独性ハナバチは、南向きの石壁やコンクリの壁、木造の建物に開いている穴を利用します。また、市販の巣箱も利用できます。
- 木のフェンスやコンクリの建物の南あるいは東側に穴をあける。
- 大き目の木材に穴をあけて巣箱をつくり、外壁などにとりつける。病気の蔓延や捕食のリスクを下げるため、大きなのを一つ設置するより、小さいのをたくさん作った方がいい。
- 穴のサイズは、深さ10cm、直径4-8mm、高さは少なくとも1.5-2mとするのがよい。異なる種のハチのために異なるサイズの穴をつくることが重要。
養蜂
あなたの農場に、養蜂業者の巣箱を置いてもらうこともできます。あなたは、ハチにポリネーションをしてもらうかわりに蜜の生産に貢献します。詳しくは、アイルランド養蜂協会連合会あるいは、北アイルランド養蜂協会のサイトでどうぞ。
巣の場所のつくりかたについては、How-to-guide: Creating wild pollinator nesting habitat(www.pollinators.ie)でより詳しく述べられています。
アクション
できるだけ肥料を使わない
牧草地におけるクローバなどマメ科植物の輪作は、化学肥料が使われる前は一般的に行われていました。現在、農業のコストを減少させる方法として再び脚光をあびつつあります。
ハチのためにすべきこと
- 肥料は必要な場所だけに散布する。
- 生垣の根もと近くに肥料が飛んで行かないようにする。肥料は、ポリネータの好む野草の成長を妨げる。
- 農場の一部では、化学肥料の代わりに、クローバなどのマメ科植物などを利用する
あなたの農場にもたらされること
- マメ科植物は、窒素固定を行うので、人工的な窒素肥料の使用が減少できコストも下がる。
- 単子葉草本や広葉草本、マメ科植物を含む多様な植物種が生育する草地(herbal leysとよばれる)をつくると、土壌の物理性、排水性、窒素固定効率、年間の生産量が向上し、ミネラルやタンパク含量のバランスも良くなる。
- 化学肥料による汚染を避け、コストも下がる。
ポリネータにもたらされること
- ポリネータにとって、開花したクローバや他のマメ科植物はよい食物資源となる。
野草のほとんどは、貧栄養な土壌を好むので、生産を行わない土地では、野草を元気にするために肥料を与えないようにします。すでに豊富な野草があり野生生物にとって大切な場所があれば保全し、生産のために使用しないでおきましょう。
多くのハチにとって、複数の植物種からなる牧草地はすぐれているようだ。このような牧草地は、家畜によい飼料を提供し、その健康と繁殖を向上させる。ひいては、私たちの農場がより快適で持続可能な場所となる。
K.& M. McCall, Suckler Farmers
近年のアイルランドにおける研究によれば、種数が多く窒素肥料の使用量が少ない牧草地はライグラスの草地に比べ、乾物生産量が大きく、温室効果ガス(窒素酸化物 NO)の排出量が少ないことが示されています。
クローバを利用しよう
- ライグラスの草地に、大きさの異なる3種のクローバを混合すると、クローバ同士が競争し、高さのバリエーションが生まれることで効率的に窒素が固定される。
- 栽培品種に比べ、野生のクローバは、より長く開花するので、ポリネータにとって好ましい。
- 多年生のクローバに比べ、一年生のクリムゾンクローバは最初の年でも花粉と蜜をたくさん生産するので、混合させるとよい。
- クローバや他のマメ科草本は鼓脹症の原因となるといわれるが、クローバが50%を越えなければ問題ない。
- 短期間でも、クローバが開花していると、ハチにとって有益である。
種数が豊富で、肥料のあまり投入されていない草地で育てられた子羊は、窒素がたくさん使用されるライグラスの草地で育てられたものに比べ、より速く成長し、歩留まりもよいこと、また、腸内の寄生虫が少ないことが、近年のアイルランドにおける研究で示されている。
マメ科草本は、緑肥として役立つと同時に、開花中、ポリネータの重要な食物資源となるのです。
Herbal Leys
イネ科などの草本に加えて、広葉草本やマメ科草本を含む様々な植物が生育する種多様性の高い牧草地は、年間を通してバランスのとれた飼料を生産します。一方、単一のイネ科草本からなる牧草地は、限られた季節にしか飼料を生産しません。
現在は一般的となっている、単一種イネ科草本からなる牧草地は根が浅いところにしかありませんが、草本の種数が多いと、根が深くまではり、より下層の土がもつ資源を利用することができます。種多様性の高い牧草地は、化学肥料を必要としませんし、家畜にとってミネラルやビタミン含量の高い牧草を提供します。
また、このような牧草地は、5年もたてば、自然の肥沃さを取り戻し、さらに根の活動のおかげで、土壌の排水性もよくなります。イガマメ、ミヤコグサ、チコリのようなタンニンを多く含む草が生育する牧草地では、家畜の寄生虫感染が減るようです。これらの植物は、ポリネータにとってすばらしい食物資源となります。
アクション
殺虫剤を減らす
殺虫剤は、ポリネータに直接の害があります。殺虫剤のせいで、死んでしまったり、生活史を全うするための振るまいや能力に影響を及ぼします。一方、殺菌剤や除草剤は、ポリネータに間接的に害を及ぼします。除草剤は、ポリネータにとって必要な野の草花を大きく減少させ、殺菌剤は、殺虫剤の毒性を高めることがあります。
ハチのためにすべきこと:除草剤
- 生垣の根もと近くに散布しない。除草が必要でも、刈り払いですませること。
- 野の花が生育しているかあるいは生育できるような、生産を直接行わない場所には散布しない。
- 防除が必要な草があっても、引き抜くか、つぼ状に処理するだけにする。
- 土手や石壁などポリネータが巣作りする場所に散布しない。
ハチのためにすべきこと:殺虫剤
- 総合的な病害虫管理の考えにしたがって、殺虫剤の使用回数を減らす。
- 散布は、穏やかな天気の日に行い、あまり広がらないノズルを使用して、野生の生物が生育する場所にかからないようにする。それによってコストも減る。ハチやその他の昆虫が活発な日中には散布を行わない。
- 散布を行う前に、地域の養蜂協会に連絡して、彼らのミツバチを避難させるように促す(たとえばBeeConnectedを見よ)。
殺虫剤を使用していても、ポリネータのためにできることはあります。アイルランドにおける規則にのっとって、こうした薬剤を使用しましょう。
あなたの農場にもたらされること
- 殺虫剤を使わなければ、お金も時間も節約できる。
- 化学物質の投入を減少させることにより、あなたの農産物のエコ度がアップする。
- 総合的病害虫管理の一環としての使用制限により、害虫が薬剤耐性をもつのを妨げる。
- 天敵の数を増やすことで、自然な害虫抑制が生じうる。
- 除草剤を減らすと、天然の牧草が増え、家畜にバランスのとれた飼料が得られる。
ポリネータにもたらされること
殺菌剤を減らすことは、野の草花とポリネータの共生関係を改善し、それはハチにとって望ましいものです。
種子処理について
多くの種子は、浸透殺虫殺菌剤処理をされています。このような処理の効果は、土壌中でも持続し、地下水にとけだし、ポリネータや他の野生生物に害をおよぼします。そのような種をうっかり使ってしまわないように、生産元に問い合わせて、種子処理がされているか、何が使われているかを確認しましょう。
このブックレットは、アイルランドポリネータプランが発行した農業ガイドラインシリーズのひとつです。シリーズには、園芸に関するものや、抵投入あるいは自然度の高い農園についてのものもあります。ほかのガイドラインについては、こちらをご覧ください。
むっちゃんこと 番場睦夫です(^o^)
お米を作って45年とは言っても1年1作のものですから、45回しか作っていません。自然相手に、おいしいお米づくりを目指して、日夜奮闘しています。!(^^)!
* 写真は、ちょっと若い時のものですが、お気に入りなので・・。(^^)/~~~