利子24900%

みなさんこんにちは。今週は、種まきウィーク。今年の播種第一回目と二回目を実施しました。私たちのところでは、苗箱で9000枚ほどを5回にわけてまきます。これだけの量になると、やっぱり機械でまきます。播種の様子は写真の通りです。播種する機械の片方の端に、前もって土をいれた苗箱を流すと、水がかけられ、種がまかれ、土がかけられ、もう一方の端でそれを手にもってパレットの上に積んでいくのです。慣れないと結構腰に負担がかかる作業です。さらに数日後芽の出た苗箱を育苗用のハウスに並べるのですが、これがまたキッツイ。泣き言のひとつもいいたくなりますが、今日はなんといってもエイプリルフール。もっと景気のいい話をしましょうか。
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左側から苗箱を流して、右側でピックアップ
イネのマット苗の場合、だいたい、箱あたり120 g くらいの種をまきます。田んぼ10 aあたり20枚使うとすると、種の量は2400 g つまり2.4 kg です。それが秋になって収穫するとき、たとえば10俵とれたとすると、600 kgなので、割り算するとななななんと250倍。元本を差し引いて24900%が返ってくるのです。1万円を半年預けたら、250万円になるようなものです。ネットを見ているときに横にでてくる怪しい広告でも、そんな大風呂敷は広げないです。でもそれって米でしかないよね?っていう貴方。確かにそうですね。でもそもそもお金なんてものは、みんなが、「この紙切れは価値がある」と思うことで成り立っているだけのものですよ。まさに幻想。お米は、栄養があります。ご飯一合(米150 g)あたり約500 kcalほどあります。成人が一日当たり必要とするカロリーは2000 kcalぐらいですから、四合食べたらそれでOKという実際的な価値があります。金(ゴールドね)なんか毒にもならないし、ダイアモンドなんてただの炭素ですよ。米より価値のあるもんなんてそんなにないですよ。ではまた来週!
と明るく終わりたいところですが、ナニブンえいぷりるふーるですから、この話もちろんインチキです。米の量についてはそんなにウソはいってないんですが、カロリーベースで考えるとどうでしょう。水稲栽培では、耕起、代かき、田植え、収穫には大きな農業機械を使います。これは軽油とかガソリンとか化石燃料をばんばん使います。使った燃料の量なら、各農家でだいたい把握できますが、さらに田んぼにまく肥料。これはほとんどが海外からやってきます。製造と輸送それぞれにエネルギーを使います。その他もろもろの作業に使う電気。使っている機械だって製造のためのエネルギーが必要だし、圃場整備にかかったエネルギー。水利施設の建設・維持のためエネルギー。エネルギーエネルギーエネルギー。もう農業が一次産業だなんて冗談ですよね。
水稲でどれくらいのエネルギーを使っているか?というのは結構むずかしい問題でして、いろんな試算がありますが、報告者によってかなりばらつきがあります。が、10 aあたりの投下エネルギー量はだいたい100万kcal以上だとされています。10 aあたり10俵とれたとすると600 kg / 150 g × 500 kcalとして、200万kcal。100万のやっとこ倍。さらに厳しい資産だと500万kcalぐらい使っているといっているのでそうすると、2/5倍。つまり投入したエネルギーより得られるエネルギーの方が少ない。
化石燃料なしでコメ作りをしていた時代は、人間や牛、馬の体力だけが投入エネルギーでした。それが再生産されていたわけだから、まちがいなくエネルギー収支は黒字だったはずです。それが赤字になっているとしたら一次産業としては明らかに退歩です。エネルギー収支が赤字になってしまうのは、農業が工業化したからにちがいないわけですが、今でも、機械化大規模化が農業の生きる道だという方がたくさんおられます。私にはさっぱり理解できないんですが、そうなんでしょうかね。まあそれはさておき、むしろ工業界では、こういった考えはずっと進んでいて、ISO14000シリーズでは、製品をつくるのにどれだけの環境負荷をかけているのか見積もるためのライフサイクルアセスメントというものが規定されています。農業界では、「うんISO14000を取得せねば」みたいな話はあんまり聞きませんし、ライフサイクルアセスメントなんて言葉もでてきません。なんとなーく、農業は環境を守る仕事みたいな雰囲気があったりしますけどそうとは限りません。何をもって環境を守るかというのは難しいですが、少なくとも投入エネルギーみたいにわかりやすい指標についてはちゃんと調べ、改善していくプロセスが必要です。そしてそうした努力がセールスポイントになる。というのは理想的なんじゃないかと思うわけですよ。はい。
やらなきゃいけないこといっぱいあるなあ。