米農家は種もみを買っているという事実をどう考えるか

TPPやら遺伝子組み換えやら、まさに「感じねえかよ、このイヤな感じを」という感じです。テレビをたまたまみたら(普段はみないけど)、街角インタビューでTPPどう思いますかって聞かれてた方が、「安いものが入ってくるらしいので期待しています。」というようなことをおっしゃっていましたが、そんなわけないじゃんって思いました。どこかの知らない人が私を幸せにしてくれるなんて、いまどき、詐欺に決まってるじゃないですか。

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今年の種もみさん

さて、米農家の大部分は(私のところも含めて)種もみを買っているよという話をしました(前回のブログで)。もっというと、米はたいがい固定種なので、種もみを自分で用意しようとすればできるのに、やっぱり種もみを買っていると。手抜き?まあ、アウトソーシングだと思えばそんなものともいえます。ですが、もっと表向き(?)な理由が二つあります。それは、品種の管理とそれに関わる規制です。

まず、品種の管理。言っておきますが、米は生き物です。生き物は、進化し続けるものです。変化といった方がわかりやすいですかね。でも、商品としてはあんまり変化されると困ります。今日買ってきたボンカレーがなんだかハヤシっぽいってことになったら困るのです。米は基本的に固定種です。米は固定種なんだから固定されてるんでしょう?ということはありません。よそから違う遺伝子が花粉にのってやってきたら固定種とか関係ないです。米は基本的に自殖(自分の花粉と自分の胚珠から種を作ること)するので、よそから花粉がやってきてまざっちゃうということがあんまりありませんが、全くないというわけではなくて、数パーセント以下の確率でまざっちゃうらしいのです。そうやって混ざって一部にちょっと変化が起きて・・・というのが何代か続くとだんだんその品種の特徴が失われていくということが起こります。なので、混ざらないようにして種もみを生産するということが必要になってきます。実際どういうことをやっているかを説明するのは面倒だから、「原種」「原々種」とかでググってください。とりあえず、そういうなんだか厳密そうなことをやって種もみが用意されることで、コシヒカリはコシヒカリ、ひとめぼれはひとめぼれということが保証されているわけです。

次に品種の管理にまつわる規制。たとえば、平成28年産石川県産コシヒカリと書かれたパッケージで米を売りたいとしましょう。当然、今年に、石川県でコメを作るわけですが、できたぞ、さあ袋に詰めて売ろうじゃないかというわけにいきません。産年・産地・品種の証明を各都道府県から受けなきゃいけません。その証明をもらうには、米穀検査というものを受けねばなりません。検査自体は、「ああ、ちゃんと米だね」って言われればいいのですが、検査の対象になるのは、「なんだか厳密そうなことをやって」用意された種もみから育てたものだけです。自分でとった種もみから育てても検査さえしてもらえません。そうなると当然、たとえ、今年に、石川県で、作ったコシヒカリなのに、平成28年産石川県産コシヒカリと言って売ることができません。そういう決まりがあるから、コシヒカリと書いてあれば中身やちゃんとコシヒカリということが保証されるのです。純粋なコシヒカリの種もみからできたコシヒカリだけがコシヒカリを名乗ってよいのです。

というわけで、米農家は種もみを買うのが正義だ!と主張したいわけではありません。といってこんな仕組みは間違っているとも思っていません。商品を作るんだから品質管理は大事です。産年・産地・品種を書いちゃダメとかちょっとどうなのよとも思いますが、それだけでこんなの全部やめちまえとは言いません。生活保護をズルして受け取る人がいるから生活保護制度をやめようとかいう人に共感しないのと同じです(違うかな)。でも種もみは買うのが当たり前っていうのは、なにか、こう、まずいような気がするのは、気のせいですかねえ。


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